コラム・インタビュー

Translational and Regulatory Sciences

TRSに掲載された国内向け研究論文(日本語論文)について

AMED感染症創薬産学官連絡会 | AMED Public and Private Partnerships for Infectious Diseases R&D

コラム

研究とビジネスの役割分担でスピーディな創薬シーズの事業化を!

創薬シーズの事業化に向けて、取り組むべき課題は数多く存在します。2014年に創業し、創薬系含む36社の研究開発型ベンチャーへの投資を実行してきたHP当社では、その中でも特に大きな課題として、「創薬シーズの事業化におけるビジネス人材」に注目し、日々解決に取り組んでいます。

研究シーズ由来のスタートアップの武器は、もちろん皆さんがこれまで培ってきた技術力の高さです。しかし、創業前のチームはもちろん、既に創業した創薬スタートアップの多くで研究者の方が、これまでほとんど経験したことのない事業開発、具体的には事業計画の作成や投資家との面談、企業とのコラボレーションの交渉などを担当されている状況が散見されます。

これはすなわち、本来、研究開発型スタートアップにおいても、研究者の方個人としても得意領域であるはずの「技術」に万全のリソースを割くことができておらず、むしろほとんど未経験の事業開発を手探りで進めているということになり、最適な状態ではないことは自明です。

自分で経営も研究もすべてを統括している状況が理想だと考える研究者の方も稀にいらっしゃいますが、おそらく多くの研究者の方は「ビジネスはプロに任せて、自分は研究に集中したい」と思っているかもしれません。

それにも関わらず、研究者の方が事業開発に悪戦苦闘している状況が生まれている原因は、やはり研究者とビジネスパーソンとの接点の少なさです。そもそも交わることが少ない2者ですので、意図的に機会を作り出す必要があります。

海外のMBAスクールでは、授業の一つとして、ビジネスパーソンと研究者がタッグを組み、事業化プランを作り上げるというプログラムがありますが、残念ながら日本では、そもそも理系と文系のキャンパスの場所が遠く離れているという状況も多く、そうしたプログラムの普及にはいまだ至っていません。

また、一部都市へのビジネスパーソンの一極集中も接点の少なさの理由に挙げられます。日本全国に点在する地方大学にも素晴らしい技術は眠っていますが、ビジネスパーソンはほとんどが大都市圏に集中しています。能動的にアクションを起こそうとしても、残念ながら移動時間や旅費といった障壁が積み重なります。

こうした課題を解決すべく、当社では、VC業界でもいち早くインハウスのヘッドハンターを雇用し、投資先・投資候補先を中心に研究チームとビジネスパーソンとのマッチングを行ってきました。

そして、現在AMED創薬支援推進ユニットの1つ、スタートアップユニットとして、新たに取り組んでいるのが、オンラインプラットフォーム「HPCo-founders」による経営人材と研究者のマッチングです。本プラットフォームは日本の課題である「ビジネスパーソンと研究者の接点の少なさ」を解消すべく当社投資先・投資候補先に対象を限定することなく、すべての方に無料で使えるプラットフォームとして開放しています。

研究者は本プラットフォーム上に「自らの研究内容・求める人材とスキル・最初の面談にてディスカッションしてみたい内容」を掲載します。そして、当社が独自に開拓したビジネスパーソンが掲載された内容を確認し、「会いたい」と思ったシーズに「ディスカッションの依頼」を送ります。

「Co-founders」の大きな特徴は、いきなり参画を前提したものではなく、まずは「ディスカッションを通してフィッティングを図ってもらうというハードルの低さにあります。

2019年4月から実質的な稼働が開始しましたが、現在、このプラットフォームを通じて、5件の参画者が、どなたもCXO※1級での参画をされていらっしゃいます。中には非都市部の大学と東京のビジネスパーソンがマッチングした例もあり、オンラインプラットフォームならではのマッチングが起こっています。

事業化のパートナーとなりえるビジネスパーソンをお探しの先生方、まずは第一歩として「Co-founders」をお使いいただいてはいかがでしょうか?

※1: Chief Experience Officer・・最高体験責任者
CEO、COO、CTOなどのようにC●Oという役職が付く幹部レベルの方

令和2年4月

Beyond Next Ventures 株式会社
マネージャー

中岡 崇

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