コラム・インタビュー

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コラム

バイオ製造支援ユニット(BMS)の紹介

バイオ製造支援ユニット(BMS)のある次世代バイオ医薬品製造技術組合(MAB組合)は、「国際基準に適合した次世代抗体医薬等の製造技術の研究開発事業」(H25~H26は経産省委託、補助事業、H27~H29はAMED委託事業)及び「バイオ医薬品の高度製造技術の開発事業」(H30~R2、AMED委託事業)において、バイオ医薬品製造に係る細胞株構築、培養、分離精製、品質管理、これらを統合したバイオプロセス全体に係る研究開発について組合員約40機関を統括して行い、次世代のバイオ医薬品製造のためのプラットフォーム(細胞株から培養、ダウンストリーム、品質管理、統合化まで)を構築してきた技術組合です。組合には、抗体製造技術開発、遺伝子治療製造技術開発、成果活用促進の3事業部があります。(HP次世代バイオ医薬品製造技術研究

バイオ製造支援ユニット(BMS:製薬会社の名前ではありません)は、このMAB組合の成果活用促進事業部にあります。アカデミア発のバイオ医薬品シーズタンパク質(Pro-X)の製造可能性を、定量的に判断するための試験法の確立を行っています。創薬支援ネットワークで支援しているテーマのシーズ開発者に、いち早くPro-Xの製造可能性試験結果をフィードバックすることで、Pro-X開発及びその実用化支援のためのエコシステム確立に貢献することを目指して活動を続けています。平たく言うとアカデミアシーズ蛋白質が、機能が素晴らしくとも商用ベースで生産できない難発現性の蛋白質でない確認、すなわち医薬品として大量製造できるようなものかどうかを評価するため、その方法や一連の技術整備とその実際を行っています(https://www.id3catalyst.jp/j/unit/bio.html)。近年、活動の幅を広げ、希望があればAMED内のアカデミアシーズや創薬研究推進の一助として抗体に限らず薬理評価などに必要な蛋白質の取得を行いアカデミアの先生方に供給もしています。

BMSユニットでの蛋白質取得の特徴は、以下の点にあります。

  1. MAB組合で開発した国産であるCHO-MK細胞を用い、この細胞を用いて蛋白質生産を行うので、高い発現レベルの発現細胞が用意できます。
  2. この細胞は大変増殖が速く、倍化時間が10時間前後であり生産能力としては、よく知られた抗体を指標にして発現系を作成すると最近では10g/L-culture以上の蛋白質発現レベルを達成しています。これまでの活動実績から通常の抗体であれば比較的簡単にg/Lレベルは可能と考えています。逆に、この細胞で、低生産性ならば蛋白質の安定性などに問題がある難発現の蛋白質だと考えられアミノ酸配列の変更など工夫を要するものと診断されます。
  3. 将来実用化の時、国策として作成した細胞であるため多額のロイヤリティーを外国企業に支払わなくてもよくなることです。ただし、組合にはロイヤリティーを払ってもらいますが、海外よりは相当お安くできます。
  4. 別途費用は掛かりますが、CHO-MK細胞で発現されたPro-X蛋白質の精製についても引き続き行うサービスもあります。ご相談により薬理試験可能な純度(エンドトキシンフリーなど)まで、ご要望に沿うように精製しています。

今後もAMEDと相談しながら、アカデミアシーズの創薬研究を加速するため協力を惜しまないつもりです。

参考:創薬ブースター(iD3 キャタリストユニット|創薬ブースター )

2021年3月

次世代バイオ医薬製造技術組合
抗体製造技術開発事業部長

阪下 日登志

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