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コラム

医薬基盤・健康・栄養研究所におけるアカデミア発創薬への取り組み

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所は、革新的な医薬品などの開発に貢献することを目的として設置された独立行政法人医薬基盤研究所と、国民の健康の保持や増進に関する調査、研究、さらには国民の栄養や食生活に関する調査、研究などを行うことにより、国民保健の向上を目指すことを目的として活動してきた独立行政法人国立健康・栄養研究所が、平成27年4月に統合されてできた厚労省所管の研究機関です。日本医療研究開発機構(AMED)の設立と同じ時にできました。

大阪府茨木市にあります医薬基盤研究所では、アカデミア発の医薬品開発をより加速させるため、統合と同時に創薬デザイン研究センターを設置しました。事務部門として、創薬支援課を置き、現時点では、8つのプロジェクト(創薬標的プロテオミクスプロジェクト、抗体スクリーニングプロジェクト、人工核酸スクリーニングプロジェクト、薬用植物スクリーニングプロジェクト、インシリコ創薬支援プロジェクト、最適化支援プロジェクト、細胞ネットワーク制御プロジェクト、創薬イメージングプロジェクト)からなる大きなセンターに発展してきました。

「連携」を研究所の重要な活動の柱と捉えており、製薬業界などの産業界や大学などのアカデミア研究機関のみならず、国の行政機関、地方公共団体など、産学官の連携のハブになることを目指して活動を続けています。平成28年度には、民間企業からセンター長を招へいし、産学連携を一層推進する体制が整いましたが、平成29年度より、研究所長も併任してもらうとともに、ワクチン・アジュバント研究センター、難治性疾患研究開発・支援センターを設置し、産学連携・社会貢献をより力強く推進できる体制を整えてきました。また、「創薬支援」をもう一つの重要な柱と捉え、創薬支援ネットワークという国の重要なプロジェクトにおいて、AMED、理化学研究所、産業技術総合研究所などと緊密に連携しつつ、ネットワークの中核を担い、創薬支援を積極的に行っています。

また、本年度より、内閣府のPRISM事業の一角を担うべく、人工知能(AI)を創薬に取り入れた研究開発を推進するため、AI健康医療研究センターを設置し、AIを用いてはじめて同定可能なシーズの発掘を目指した研究を中心に、医療機関などとも連携しながらAI創薬を推進しています。

現在、東京都新宿区にあります国立健康・栄養研究所を、大阪府吹田市の「健都」に移転させるという計画が進んでいますが、2つの研究所が統合しなければ始まらなかったと思われるシナジー研究がいくつか開始されており、その成果が出てきています。1つの特筆すべき例として、腸内細菌に関する研究が挙げられます。国立健康・栄養研究所が東京で行って参りましたコホート研究をさらに発展させ、健常人の腸内細菌叢に関する調査研究を平成27年度から開始しましたが、その主な解析は、医薬基盤研究所の専門家が担っています。さらに、平成28年度からは、地方の自治体と連携することにより、調査の対象地域を、山口県周南市、新潟県南魚沼市などにも拡大させ、日本人の腸内細菌叢と食・運動などの生活習慣との関係の全貌の理解に向けて研究を進めています。

今後は、これらの研究を着実に進展させ、日本のアカデミア発世界初の革新的な医薬品などの開発や健康長寿社会の実現に向けた貢献ができますよう、一層の努力を続けていきたいと思っています。

平成31年4月

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
理事長
 米田悦啓

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