コラム・インタビュー

Translational and Regulatory Sciences

TRSに掲載された国内向け研究論文(日本語論文)について

AMED感染症創薬産学官連絡会 | AMED Public and Private Partnerships for Infectious Diseases R&D

コラム

「薬剤耐性(AMR)」に対して、今後どのように創薬研究に取り組むか?

現在、国際的な対策が急務となっている薬剤耐性(Antimicrobial Resistance : AMR)の問題については、WHOや CDCの精力的な活動により、新たな機序の抗微生物剤などの創薬研究の重要性が認識され、世界的にも創薬研究開発支援が活発化してきてはいるが、未だ本格的に稼働している状況ではない。
このような状況下、国内においては日本医療研究開発機構(AMED)が、今後AMRの対策に必要とされる新たなワクチン、迅速診断法、新たな機序の抗微生物剤などの研究開発推進の一翼を担っている。特に、AMR関連の創薬研究開発を推進するため、以下の1)〜5)の事業においてAMR関係の創薬プロジェクトの支援を行なっている。

1)創薬総合支援事業(創薬ブースター)
2)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業
3)基盤創生事業 多分野融合研究領域
4)医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)
5)革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)


*1)〜2)は創薬事業部 創薬企画・評価課、3)は疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課、
4)は革新基盤創成事業部 計画調整課、5)はシーズ開発・研究基盤事業部 革新的先端研究開発課が担当

AMEDにおけるAMR関係の創薬研究支援テーマ

これらのAMED支援事業から生み出される成果を実用化していくには、単にビジネスの視点のみならず、感染症という特殊性も考慮した社会貢献の観点からの取り組みも必要である。 従って、製薬企業のみならず、大学などの研究機関、学会や行政などとも連携して研究開発を推進していくことが鍵となる。
このため、ビジネス的観点から優先順位が高くない感染症疾患に対して、産学官を効果的につなぎ、活発な連携と研究開発の活性化を誘導するための仕組みが必要であり、所謂、Push型インセンティブ(研究開発費用支援等)及び、Pull型インセンティブ(事前買取制度、市場や需要形成支援等)が、研究開発のエンジンとして、今や必要不可欠なものとなってきている。
Push 型インセンティブについては、欧州ではIMIが、米国ではCARB-XやBARDAが大規模な予算ときめ細かい研究支援を実施しており、その成果も出て来ている。加えて、特許期間やデータ保護期間の延長、研究開発費の補助金制度、減税措置などに関する法律も作られ、抗菌薬の研究開発を後押しする制度を確立しつつある。

抗菌薬研究開発におけるプッシュ型とプル型インセンティブ

しかし、このようなインセンティブを整備されても、製薬企業が従来のビジネス的視点で感染症領域の創薬の機会を捉えている限り、感染症領域の創薬に回帰してくる保証はないので、これらの仕組みに加えて、異なる新しい発想、例えば、SDGsのような考え方を取り入れた持続型の研究開発システムの構築といった発想も必要になってくると個人的には考えている。従って、感染症領域の特殊性(グローバルレベルでの危機管理等)も考慮した産学官の各ステークホルダーを効果的に繋ぐ新しいビジネスモデルの構築が、大変重要となってくると思われる。

このような状況も鑑み、この度AMED iD3 キャタリストユニットのHP内にhttps://id3catalyst.jp/apid/ AMED感染症創薬産学官連絡会のサイトを開設しました。これに先立ち、AMED感染症創薬産学官連絡会では、昨年、AMR創薬研究の活性化を目的として、標的とする病原菌リストを産学官で連携して作成しました。感染症創薬に興味を持っている方は、是非、覗いていただければと思います。

AMR創薬研究で標的とする病原菌リスト

このHPが活用され、AMR関係の創薬研究が活性化され、加速化されることを関係者として心より願っている次第です。

皆様、AMR創薬研究における連携と応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします!

AMED感染症創薬産学官連絡会事務局
藤江昭彦

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